01
物販事業編
新しい業態を作りたい
自分たちの業態を業界内で名の知れたお店にできた私たちには自信があった。
そしてそれを展開し続けた私たちに、お店を立ち上げる力は確かにあった。
しかし新たに業態を立ち上げるとなると、事はそんなに簡単ではない。
同じ物販業でありながら、そこにあるルールや慣習、趣味の世界の奥深さ、次々に出てくる必要な商品知識、
そしてお客様の特性は、それぞれ大きく異なる。
そのことに気づいたのは、すでにオープンを3か月前に控えたその日だった。
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#01
できるのか?私たちに
1000坪の広大なお店、そこは希望に満ちていた。
何をおいても余る売り場。アイデアは無限に出る。フィギュアを置こう、エアガンも欲しいな。ブランドバックはセキュリティを大事に。CDやDVDは今のお店から在庫を配分すれば簡単にできると思う。
バッティングセンターがあるから毎日来ていただけるな。古着も余裕で置くことができる。物販事業部で構成された新業態開発チームは活気に満ちていた。
売り場を仕切るチーフバイヤーも売り場構成に四苦八苦しつつも、できるはずという自信があった。
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#02
商品が足りない
邪魔をしたかつての成功体験中古を扱う物販店のセオリーとして、新店をオープンさせる前に買取オープンをさせる。
そんなことはわかっていた。そして、買取りが始まれば売り場は埋まっていき、新店舗をオープンさせるまでには商品であふれかえる。それが今までのセオリーであり、毎日の積み重ねが満たしてくれる。
そんなことを考えていた私たちに過酷な現実は突き付けられた。商品が足りない。そして、知識が足りない。
その商材を好きなスタッフが担当についた売り場はまだ良いが、誰もわからない売り場ができた。価値がわからない、値付けができない。一生懸命にその商材のことを学んだが、全く追いつかない。
それでも売り場は埋まらない。最大の売り場と最多の商材が私たちを苦しめた。 -
#03
仲間と共に創り上げる
知恵は無限に出るもう一度、グループ内で募集をかけた。
商材に詳しいスタッフはいませんか?新しいお店を立ち上げたいスタッフはいませんかと。『トレカなら詳しいです』
『サバイバルゲームが趣味です』
『昔、ブランド品の買取をやってました』
『実はフィギュアのコレクターです』十数店舗ある既存店からは多くの異動希望の声が上がる。彼らから多くの意見が生まれた。趣味の世界の奥深さは、彼らによって鮮やかな売り場に昇華された。
『ここはこうしたほうが嬉しい』『この商品は実は価値がある』
なんていう言葉が売り場を活気づける。
『新しいお店を立ち上げたいと思ってました』『手書きの販促POPが書けます』
そんな言葉が皆を勇気づけてくれる。そして、さらに私たちを勇気づけたのは『新しい風』だった。
新しく採用できたスタッフの中にも多くの知識を持った『新しい風』たちはいた。
その知識の融合で広大なお店は少しずつ形になっていった。 -
#04
そして現在
お店には多くの商材が並ぶ。
デュエルスペースで遊んでくださるお客様。UFOキャッチャーに興じる親子づれのお客様。
入ったばかりの限定品を嬉しそうにご覧いただくお客様。
新作ゲームやコミックをたくさん持ってレジに並んでくださるお客様。そして、笑顔で対応する私たちの仲間たち。
地域最大級のお店は今、立ち上がりました。そこにあった残酷な現実を乗り越えて、お店は今、笑顔に満ちています。
そのお客様の笑顔を見た時、本当にうれしく感じます。仲間がいれば大丈夫。そして私たちは今日も歩き続けます。